何気なく使っている、『番台』や、『フロント』といった銭湯用語。
我々銭湯ファンには馴染みの言葉ですが、あまり銭湯経験のない方にとっては
いまいちピンと来ないのではないでしょうか。
 
銭湯お遍路も一休みの、"茶屋で一服"
今回は、これらの用語について解説したいと思います。
一言でいえば、どちらも従業員の方が座り、料金の受け渡し・備品の販売を行うところです。
最大の違いは、位置と向き。
 
 
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○ 番台とは

浴場を向いて脱衣所内にあり、板の間稼ぎ(窃盗)の防止、
浴場での事故の早期発見を目的として作られたのが、番台です。
ここに座る従業員の方を、"番台さん"と呼びます。
  
高くて、想像以上に見晴らしが良い(座ったこともある)。
その起源は古く、なんと江戸時代の湯屋にまで遡るといいます。
この形式の銭湯は昔ながらの風情を色濃く残したところが多く、
昭和ドラマの雰囲気を味わいたいのならば、絶対にこちらがお勧め。
 
しかし着替えや浴場内が番台さんからまる見えのため、若い層や女性には敬遠されてしまうことも。
 
 
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? お釣りの準備をする、月の湯(文京区)のおかみさん。
   これはかなり古いタイプ。手前の穴の開いた台から、上って座ります。
 
 
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? 台東区の快哉湯にて、凛々しい表情で座る若いおかみさ...
   あれ、もしかしてトーキョー猫録の...? 
 
 
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? 群馬県館林市の、まるで時代劇のセットのような梅乃湯にて。
   いつごろからあるものなのか、今はもう誰にも分からない。
    
  
○ フロントとは

それらの問題を解決するために台頭してきたのが、フロントです。
脱衣所よりも壁一枚手前にあり、ここのさらに奥の暖簾を潜って、脱衣所へ進みます。
よって、番台さんの目を気にせず着替え・入浴することが可能。
比較的最近の創業、建て替え・改装を行っているところに多くみられる様式です。

新しいが故に設備が充実しているところが多いのですが、
趣のある正面建築が失われていたり、スパのように小奇麗過ぎたりして、
昭和風情を楽しみたい方はがっかりすることがあるかもしれません。

 
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? 江東区・松の湯にて、テレビに見入る店主のおじいさん。
   ここで、延々とお客さんとの世間話が続くことも。
 
 
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? 大田区・鵜の木の第三松の湯にて。
   シャンプーやタオルなど、たくさんの備品が売られています。 
 
 
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以上が、番台とフロントとの大まかな違いです。
あくまで「大まか」なので、古めかしいけれどフロント形式であったり、
真新しいフロントでも奥には素晴らしい富士山があったり、
場所と形は明らかに番台でも浴室とは真逆の方向を向いていたり、という例も見られます。
 
ただこの区別によって、だいたいの雰囲気を想像することは可能です。
私はいつも東京浴場組合のページのこの項目を見て、次に行くところの目星をつけています。
昔ながらの風情に浸るか、小奇麗な設備を楽しむか。
あなたの好みは、どちらでしょう。
  
 
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