ひっそりとした敷地の奥に構えた、荒川二丁目の富士見湯。
正面入口こそ質素な面構えだが、暖簾を潜れば迎えてくれるのは
二股に分かれて吊り下がる裸電球に、柄の長い三枚羽プロペラだ。
それを囲うのは、まるで地中海の家々を思わせる少しくすんだ白い壁。
番台の頭上からは、目深に帽子を被ったフランス人形が物憂げな表情で入浴客を見下ろしている。
 
 
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なんとも不思議で幻想的な雰囲気を漂わせる、この銭湯。
昨冬に訪れた際は日が暮れても閑古鳥が鳴いていたものだが、
この日浴室に響き渡っていたのは、大勢の子どもたちの元気な叫び声だ。
 
理由は、前日・7日の土曜日から行われていた天王祭。
表通りでは小振りな神輿が練り歩き、着替えを片手の子どもたちが後から後からやってくる。
玄関には入れ代わり立ち代わり、脱ぎ捨てられたちっちゃな靴が途絶えることがない。
 
 
冷たい水をかけ合って遊ぶ子どもたちを目前に、思わず顔がほころぶ番台のお婆さん。
こんな騒々しい夕暮れ時は、いつぐらいぶりか知れないことだろう。
だがこれを最後として、富士見湯に甲高い賑やかな声が戻ってくることは2度となかった。
 
 
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○ 富士見湯

住所 東京都荒川区荒川2?29?8
 
※ 2008年6月9日をもって廃業